スローフード国際会議 in モロッコ(2011.6.11)-②

投稿日 2011年07月01日
カテゴリー スローフード運動について, 海外情報

現地時間の6/11、モロッコにおける国際ガバナー会議におきまして、スローフード協会会長のカルロ・ペトリーニ氏が巻頭スピーチを行いないました。
その内容を、石田雅芳さんがまとめてくれましたので、以下に掲載します。

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カルロ・ペトリーニ会長の挨拶
(2011.6.12 モロッコ・ラバト市にて)

スローフードの国際運動22年目にして、ガバナー会議が初めてアフリカ大陸で行われる運びとなりました。これは政策的、文化的意味合いを持っています。ここ4年間でアフリカの運動は飛躍的に進展しました。会員数やコンヴィヴィウム、活動も増えました。オーガナイズをしてくれたモロッコの方々に感謝いたします。オーガナイズに対して、そしてズビーダさんに。

福島支部のリーダーには、彼らに対する私たちの団結心を伝えたいと思います。これから長い期間に渡って、被害を受けるかもしれませんが、協会はこのような状況にあっても、いつでも私たちが側にいることを伝えたいと思います。

歴史的なイベントである2007年のプエブラ国際大会から、すでに皆様にお伝えしたように、2012年まで1年間開催をのばすことを考えています。この4年間でいろんなものが変わりました。運動は発展をとげました。テッラ・マードレという世界唯一のイベントが、協会に重大な刻印をしました。2004年は2つの重要な出来事がありました。テッラ・マードレと60人の学生を迎えての食科学大学の創立です。2007年の世界大会には食科学大学の学生も参観しました。新しい国際理事組織に、副会長として若い学生だったジョン・カリユキを迎えたのは勇気のいる選択でした。

2004年の第一回テッラ・マードレには、農業者、漁業者、職人などが、120カ国より集まりました。何か新しいものが生まれようとしていました。それは生物多様性や、持続性のある小さな産業を支える人々の尊厳など、人々に共通なテーマを掲げたネットワークでした。これがスローフードをまったく違うものにしました。

毎年のように新しい刺激が協会にやってきます。ポッレンツォへは50カ国の学生がやってくるようになりました。それは若者やテッラ・マードレによるネットワークに発展しました。ここでは大きなネットワークとコミュニティ意識が醸成されたのです。学生が皆さんの国で実習する時には、みなさんの情熱と歴史をぜひ伝えてやってください。実習は良きことを共有する精神を持った人々に支えられています。この実習はどんな科目よりも有効なものです。ホリスティック(総合的)で完全な視野をもたせ、学生は実習を通して成熟し、認識を新たにするのです。

テッラ・マードレは4回行われました。2010年の4回目にはトータルで6000ものコミュニティ、173カ国のネットワークに成長しました。人は「たった4日間で人生を変えられるか?」と問いますが、私はイエスと答えたいと思います。そして参加者した人々と世界がそう答えることでしょう。私が旅行先で聞くのは、アフリカや南アメリカで「テッラ・マードレが力を与えてくれた」という声です。アメリカやヨーロッパなどの豊かな国でも、テッラ・マードレは変化への自己啓発となっているのです。テッラ・マードレはビューロクラシーなしに帰属意識を生み、貴重な人間関係や友情を生みました。

プエブラは私たちにとってスタートでしかありませんでした。2007年から今日まで、まかれた種は成長しました。力をももったのです。この植物は主格を待っている状態なのです。

どのくらいの変化があったかを皆で認識しましょう。2007年には5−6万人だった会員数も、今や10万人です。700のコンヴィヴィウムは1500になりました。その活動はアフリカにも広がり、6—7コンヴィヴィウムから40カ国に広がる50以上のコンヴィヴィウムに増えたのです。これらはテッラ・マードレの子供たちと呼ぶことができるでしょう。アジアやラテンアメリカでもテッラ・マードレはコンヴィヴィウムを増やすのに貢献しました。テッラ・マードレによってスローフードはより確固としたものになり、テッラ・マードレはよりアナーキーなものに成長しました。

ここから2012年にかけて協会はもっと成長をとげるでしょう。より若い力を取り入れ、スローフードの政策面も、環境への責任ある政策、持続性、国際性、ガストロノミーの新しい概念、それは総合的な視野にたったもので、完全で、おいしい、きれい、ただしいを体現したものになるでしょう。「おいしい、きれい、ただしい」のモットーは、スローフードの外でも使われるようになりました。それもすべての言語で。

プエブラでは生まれたばかりの概念でしたが、いまやどこでも使われています。スローフードはこのスローガンなしには語られなくなりました。すべての食コミュニティでも使われています。今年3月にポッレンツォで承認されたように、国際大会は1年延期されます。でも2012年は情熱のほとばしるような一年になるでしょう。情熱がなければ皆さんもこの席に着いていないはずです。情熱と友情がスローフードのフムス(土壌)なのです。

来年は情熱的な年になるでしょう。スローフードはよりテッラ・マードレに近く、テッラ・マードレはよりスローフードに近づきます。あちこちから声が届き始めています。スローフードはエリート団体だとか、グルメ団体であるという人間がいるが、テッラ・マードレが私たちにこう言わせてくれるでしょう「そんなことはない!」と。

あらゆる人々の共通の価値として、食の喜びをすべての人が享受すべきです。イタリアやフランスの食が人類の遺産なのか?いや、世界のすべての食が私たちの遺産なのです。それはこの町のメディナで見たように、智慧と文化、味覚の結晶したものです。それをスローフード全体で認識しましょう。「食の権利をすべての人に」「食は人類の権利」食べれない人がいるなら、権利に背くこととして、彼のコミュニティが解決するべきです。

すべての生き物は食への権利をもっています。世界の憲法、法律、経済がこれに沿うように。食べれない子、食べさせられない母がなくなるように。これらのことを理解させるのは難しいことです。いまだ従来のガストロノミーにしがみついている人たちがいます。ワインの香りにつられて入会した者もいるだろう。(そのような人も維持すべきではありますが)、これが2007年ころの状況でした。

当初はテッラ・マードレに来ようとしない人がいました。このイベントの潜在力を理解しなかったからです。来年テッラ・マードレは5回目の開催となります。テッラ・マードレとスローフードの結婚とでもいいましょうか。

アリスウオーターが、パッチワークの比喩を使っていました。つまりコミュニティは1つ1つの布切れであり、スローフードはそれらを縫い合わせる糸であるという考え方です。色も材質も違ったいろんな布切れを準備しましょう。
テッラ・マードレに参加した食科学大学の18歳の学生が言った言葉です。この子はスローフードも何も知りませんでした。

「テッラ・マードレはスローフードのアイディアから生まれたもので、農民がたがやす土のようなもの。最初は大きな収穫は期待できないとしても、それは豊かな大地であり、成果や思想が少しずつやってくる。150カ国に40万人いる世界中のいろんな人と交流して、私はこう思います。みんなが自分自身でいてくれることに感謝。」

世界大会とテッラ・マードレ2012が同時開催され、大会の参加者は、テッラ・マードレの参加者でもあります。世界大会はテッラ・マードレのワークショップになります。すべては1つとなってテッラ・マードレの精神のもとに行われます。大会参加者は会員だけではなく、25%はテッラ・マードレからの非会員を含みます。彼らも物事を決定する権利を持ちますし、政策に関与します。テッラ・マードレの参加者にも開かれた大会であるべきです。スローフードがない国でも、一緒に大会で議論をしようではないですか。それによって新しいコンヴィヴィウムの創立を促したり、より深い根をはった新しい協会を目指しましょう。

スローフードは開かれた協会です。北極星のように輝きます。地域レベルでのアクションも進めます。1つはテッラ・マードレ・デーで、今年は3回目になります。いまや1200コンヴィヴィウム、16万人が参加しました。2つめは、モロッコやケニアで行われたような国や州レベルの地域テッラ・マードレです。3つめはUSAとヨーロッパ2つのテッラ・マードレです。

2013年7月1日から14年にかけて、ヨーロッパの農業政策は変わります。それは小生産者だけでなく私たち全員に関係します。27カ国にクロアチアも入るでしょう。EUの委員ジャン・チョロスも、珍しく黙ってこちらの話を聞いてくれた。EUの農業政策転換に賛同してくれました。もはやヨーロッパ27カ国にテッラ・マードレの参加者がいるのです。変えられます。テッラ・マードレをブリュクセルで開催しましょう。来年5月に小生産者と漁業者によるロビーで開催しましょう。ヨーロッパの政策を変えることで、アフリカの政策を変えましょう。アフリカで行われている食品ダンピングをやめさせましょう。

スローフードは糸です。縫い合わせる布は若者や音楽家、業業者などの社会を表現したもの。スローフードの会員でなくてはならない理由はありません。グリンピースだっていいのです。テッラ・マードレは全員に共通に存在します。スペインからの大きな参加を期待します。スローフードがなくてもテッラ・マードレがある場所から、コンヴィヴィウムがなくても農業者を連れてゆきましょう。スローフードはAustera Anarchia(訳注: コントロールされた無政府主義。スローフードは様々であり、やっている私たちも大勢である。でもそれぞれがスローフード精神に則って進めば、自ずと一つの意思となることができるという意味)です。バスクから、スペインから300人連れてきてください。ハンガリーもポーランドも、マルタ島も。イギリスもドイツも多様性を尊重しながら、それぞれの協会をつくってください。会員証を持っていなくとも、違う思想を持っていようと、すべての地域によって1つのモデルを表現しましょう。イデオロギーに閉じこもっていてはいけません。

2010年のテッラ・マードレに、アメリカのあらゆる州から参加があったことは喜ばしいことです。テッラ・マードレUSAは春に開催されます。地球全体を視野に入れたイベントにしていただきたい。とかく1年半の情熱が私たちをまっています。

アフリカに1000の菜園というのは、私たちのような小さな協会にとって、非常に多い数ではあります。ラッファエル・ペレツ(スイス代表)は似たようなプロジェクトはすでにいっぱいあるというのですが、そうは思いません。1000の菜園はケニアに200、モロッコに50、50カ国のうち20カ国に呼びかけます。それだけではなくアフリカから食科学大学に学生をよこすために、私たちがお金を調達します。彼らの勉強する権利を守りたいと思います。ここにいる皆に頼みたいと思います。それはほんの少しの貢献でも良いのです。ピエモンテの格言でこういうものがあります。「少しは少しだが、まったくないのは少なすぎ」1000の菜園について、全てのコンヴィヴィウム・リーダーに手紙を書かせていただきます。アフリカに1000も菜園を作るのは、私たちの協会だけです。ガストロノミーだけではなく、アフリカにたくさんの会員がいる協会です。菜園も運営している。私たちはそういう協会なのです。

河の中でいつまでも濡れている訳には行きません(ラッファレル・ペレツの比喩を使って)。後退か川の向こうの友愛へたどり着き、協会の意義へ向かうかです。そこは実務や規約書やビューロクラシー、お金の問題などでもめることのない場所にしたいものです。河の中で溺れて死なないように。ガストロノミーは人類の重要な一部をなすものです。世界をホリスティック(総合的)に認識するためのビジョンです。協会はJoyeuse (フランス語で喜びにあふれた)ものでなくてはなりません。会うのが楽しくなるような、それでいて確固とした信念をもったもの。協会で集まるときは、皆が大切に思えるような、楽しい友人たちに会うようなものであるべきです。現実と慎ましさと友愛をモットーとして、情熱こそが私たちの運動を他とは違うものにしてくれます。

私たちは食を楽しむためのシャツと、アフリカへの連帯という2つのシャツを着ようとしているのではありません。麻の快適なシャツを1枚来ようとしているだけなのです。

もう一つ大切なことがあります。ペトリーニもいよいよ退職するということです。会長も退職する権利があります。でもこの国際ガバナー会議は大切なものです。20カ国だけではなく、50、60カ国に参加国を増やしてゆきたいです。糸で布切れを縫い合わせましょう。

私が話すと音楽のように聞こえるらしくて、後ろの紳士は身動き一つしませんでした(うしろの昼寝スペースでいびきをかきながら寝ている男のこと)。

会場大拍手。会長スピーチ終わり

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